フェルデンクライスで『ながらATM』は可能?
健康雑誌・ファッション雑誌・情報雑誌などの新聞広告でよく『ながら体操』といった文字を見ます。見出しから想像すると、
- テレビを見ながら
- 台所仕事をしながら
- アイロンかけをしながら
- 洗濯物を干しながら
- 掃除機をかけながら
- 拭き掃除をしながら
- パソコンをしながら
- …
といったことをしながら簡単に体操ができ、筋トレになったり、代謝upしてダイエット効果がある、といったことが書かれているようです。
フェルデンクライス・メソッドのグループレッスンATM(Awareness Through Movement:動きを通した気づき)は、一見ゆったりした体操のように見えますから、『ながらATM』も可能でしょうか? グループレッスンでは、ATMティーチャーの指示を聞きながら動いていきます。動きとその順序を覚えてしまえばテレビを見ながらできそうですし、動きの一部分ならパソコン作業をしながらもできそうです。
今のところ私は上であげたような『○○しながらATM』はできないと思っています。
ATMは動くことが目的でも、筋トレでも、ストレッチでもありません。
動きを通して『気づく』ことが一番の目的なのです。
何に気づくのか?
いつもの動作の底にある無意識の或いは習慣化された動きの反応・反射に気づくことです。
この意識にのぼらない動きを気づくのに、『ながら』では不可能でした。
動きを覚えているATMをしていた時、私の意識が自分の動きや身体から離れ別のことを考えたとたん、それはフェルデンクライス・メソッドの動きではなくなり、体操もどきのようなものになってしまいました。
身体は記憶しているATMの動きをしています。でも、それは気づきにも学びにもつながらない「単に身体を動かしている」だけのこと。
ピアノの調律をするのにピアノの音を聴かなければできないのと同じで、動きを再組織・調整するのに身体の動きを(内側から)観る必要があるのです。たくさん筋肉が動員されている中で、動きの質そのものに意識を向けることは大変難しいと思います。
(このため、フェルデンクライスのATMでは床の上で寝て行うレッスンが多いのです。「立つ」だけでもたくさんの筋肉が働いています。それを減らした中で動いて気づくのです。指先ひとつ動かすにも、本当に多くの筋肉が関わっていることを感じると、驚きと不思議で自分の身体に興味を持つことができます。)