フェルデンクライス日記かもしれない

フェルデンクライス・メソッドについて感じたこと考えたことも書いています。

言葉で「動き」を説明する

君はトラクターの運転手ではない。
都会から来たアーティストなんだ。
(ボリショイバレエ第一ソリスト岩村さんに、喜劇「明るい小川」での役『アコーディオン奏者』が
村娘を口説くシーンの踊りを説明する振付補佐の言葉)
NHK「プロフェッショナル−仕事の流儀:File104 バレエダンサー 岩田守弘」から)

パンをこねる時のパン種が上へ伸びるだけ伸びて
下へパタッと落ちるようにイメージしてください。
波が打ち寄せるように頭は自由に、背骨全体が動くことを感じてください。
(演劇雑誌(名称不明)の特集記事「現代の俳優修行−肉体訓練の実際」から)
(1979年7月、日本新劇俳優協会主催のワークショップでの講師の言葉)

ハワイのビーチに寝転がっているつもりで。
(FPTP京都にて、2008.12.27、ロビー・オフィアーさんのATM指導)

バターが溶けるようにゆっくりと。
(フェルデンクライス京都ワークショップ、安井武さんのATM指導)

どれも、動きのニュアンス・イメージを説明するときに使われた言葉です。


フェルデンクライス・メソッドのグループレッスン(ATM : Awareness Through Movement=動きを通した気づき)では、基本的にATM指導者の言葉だけでレッスンが進んでいきます。インストラクターによる「お手本」や「見本」に倣って受講者が動くという方法を、フェルデンクライスメソッドではとりません。レッスン受講者は「動きの指示」を聞き、「動き」を想像し、「動き」を実行します。


ひと目みたらすぐにわかる動きも、言葉で説明するとなるとかなり大変です。しかも、言葉で説明するのは“ポーズ”(=静止したもの)でなく、“動き”です。

  • レッスンの目的の動きをしてもらえるように
  • カニックな動きにならないように
  • 動きから、体の中のつながりを感じてもらえるように
  • レッスンのテーマを感じてもらえるように
  • etc…

するには、どういう言葉を使って、どういう風に言葉を届けてATM指導をしたらいいのでしょうか?レッスン受講者が、耳から聞いた言葉で「動き」をイメージし、そして動いて、その動きの感覚から気づきを得、古い動きのパターン(習慣)を修正していく。
その流れを作る言葉と話し方。
少し“話芸”に通じるところがあるかもしれません。


手を使ってクライアントの身体とコミュニケーションをとるFIレッスン
(Functional Integration=機能的統合、個人レッスン)
言葉を使ってクライアントの身体とコミュニケーションをとるATMレッスン
(Awareness Through Movement=動きを通した気づき、グループレッスン)


フェルデンクライスメソッドを学ぶことで、これほど“コミュニケーション”を考えることになるとは思いませんでした。