身体が知らないことは
内田樹さんの本
- 作者: 内田樹
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2007/09/04
- メディア: 文庫
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身体が知らないことは、いくら本を読んでも会得できない
そうなのだ。身体術や身体操作について書かれている本を読んでも、私にはちんぷんかんぷんな事が多い。読む人が読んだら、すぐに理解できるのだろうが、私の場合、興味があってせっせと読むものの、頭は文字を追うばかりで、身体は沈黙している。
- 野口晴哉さん(野口整体)
- 野口三千三さん・羽鳥操さん(野口体操)
- 甲野善紀さん(古武術)
- 片山洋次郎さん(整体)
- 内田樹さん(合気道)
- 増永静人さん(経絡指圧)
- 遠藤亮及さん(気の指圧)
- 橋本敬三さん・三浦寛さん(操体法)
- アレクサンダー・テクニーク
- フェルデンクライス・メソッド
……
ざっと思いつくだけでも、これらの方々の著作や関係する本を読んできた。
しかし、悲しいかな
私の身体が知らないことは、いくら読んでも分からない
、のである。
最初見慣れない単語でも、関係する本を何冊か読み続けているうちに、何となく分かったような錯覚をする。(=知ったかぶりができるようになる)こうして、私の頭は簡単に分かったふりをするのだが、正直者の身体は何冊読んでも「ふりをする」ことができず、「???」を抱いたまま困っているか、無反応か、である。
これは、小説を読んで、主人公に共感したり、物語に感動できることと随分ちがう。上記の方々の本を読んでも、身体は少しも理解も共感もしてくれないのである。沈黙したままでいる。fMRI(機能的磁気共鳴断層撮影)や光トポグラフィーといった機械で脳の反応の様子を見たらおもしろいかもしれない。身体術の本を読んでいる時と小説を読んでいる時の私の脳では、活動領域がちがうのでは?と思う。
ところが、多田容子さんの最新作「自分を生かす古武術の心得」(集英社新書)を読んで変化があった。この本は書名の通り身体術系の本である。読むと私の身体に動きがある。参加しているのである。私の身体は、共感したり反応したり考えていた。だからなのか、これまで読んだ関係本の中で、脳も身体も一番楽しみ、実感できた一冊だと思う。