経験はやっかい
FPTP京都(フェルデンクライス指導者養成コース)のクラスメイトに紹介してもらった本
- 作者: ホルヘブカイ,Jorge Bucay,麓愛弓
- 出版社/メーカー: めるくまーる
- 発売日: 2005/02
- メディア: 単行本
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- 作者: 北川達夫,平田オリザ
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 2008/04/01
- メディア: 単行本
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北川―
とくに経験というのはやっかいですね。
その人にとってはまちがいなく事実であり、絶対的な真実と思い込みやすいですから。
でも、自分の経験だけを意見の根拠にするのは危ないんです。
その経験がすべてにあてはまるはずはないし、他人にはその人の経験を評価しようもない。(59−60頁)
を読んで思い出したのがフェルデンクライスのATMレッスンを受けたあとの質問です。
ATMレッスン後、
- 立ち方・歩き方は、どう変わりましたか?
- どんな感じがしますか?
- 何か新しい感覚がありますか?
といったことをプラクティショナーから質問されます。
今年5月の第1セグメント(2008年5/1〜5/15)では、講師のフランク・ワイルドマン博士がATMレッスン毎に私達にこれらの質問をされました。これまで以上に何度も質問があったのです。そして、数人が皆の前で発表したり、グループに分かれて感想を述べ合ったりしました。博士の意図は
●同じようにATMを受けても、「感じ方」は皆それぞれで違う
●他人が感じた内容を知ることで、ATMのいろいろな可能性を知ることができる
ということを私達に理解させるためのものだったと思います。
本の一文に通じると思いますが、「経験はやっかい」です。まして、過去に受けたATMレッスンと同じ或いは似たような感じを別の機会にも体験すると「このATMをすると、こうなるんだ」と自分の感覚(記憶)を強化しがちになります。特に強烈な体験・感覚を得ると、気をつけないと自分にも他人にも「ある効果」「ある感覚」を強いるかもしれません。
そのグループ内のほとんどの人が同じ感想を持ち、自分だけが違う感想を抱いた場合、他人と同じ感覚・似た感覚を得られない自分は、
- どこかおかしいのでは?
- 間違った動き方をしていたのでは?
- やっぱりこのメソッドは自分に合わないんだ
- …etc
と思いがちです。プラス方向の感想ばかりが出ている時に、ゼロやマイナスの感想は言い出しにくかったり、或いは「それはおかしい」と相手の感想を否定してしまうかもしれません。
一番強く印象に残ったやりとりがあります。
(ATMレッスン終了後)
博 士:何か動きに変化がありましたか?
生徒1:足裏が地面にぴったり吸い付く感じがして、体にとても安定感があります。
生徒2:背が伸びた感じがします。
生徒3:私は、このレッスンで何も変化を感じないのですが…
博 士:何も変化を感じない人は何人いますか?
(40人中、4,5人が手を挙げる)
博 士:いい感想でしたね。
レッスンを受けて「何も変化がない」人もいることを皆さん知っておいてくださいね。
ATMをして、常に何らかのプラス(気持ちが良い・動きが楽になる・体が軽くなるetc)やマイナス(脳が混乱する・気持ちが不安定になる・筋肉痛が出る・痛みが増す・足元がふらつくetc)の変化がある私が、「何も変化がない」という「ゼロ」という状態があることを初めて知ったのです。