フェルデンクライス日記かもしれない

フェルデンクライス・メソッドについて感じたこと考えたことも書いています。

経験はやっかい

FPTP京都(フェルデンクライス指導者養成コース)のクラスメイトに紹介してもらった本

寓話セラピー―目からウロコの51話

寓話セラピー―目からウロコの51話

がどんな本か見てみようと探したのですが、大型書店でも見つかりませんでした。それで代わりに買った本が
ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生

ニッポンには対話がない―学びとコミュニケーションの再生

その中の一文、

北川―
  とくに経験というのはやっかいですね。
  その人にとってはまちがいなく事実であり、絶対的な真実と思い込みやすいですから。
  でも、自分の経験だけを意見の根拠にするのは危ないんです。
  その経験がすべてにあてはまるはずはないし、他人にはその人の経験を評価しようもない。(59−60頁)

を読んで思い出したのがフェルデンクライスのATMレッスンを受けたあとの質問です。


ATMレッスン後、

  • 立ち方・歩き方は、どう変わりましたか?
  • どんな感じがしますか?
  • 何か新しい感覚がありますか?

といったことをプラクティショナーから質問されます。
今年5月の第1セグメント(2008年5/1〜5/15)では、講師のフランク・ワイルドマン博士がATMレッスン毎に私達にこれらの質問をされました。これまで以上に何度も質問があったのです。そして、数人が皆の前で発表したり、グループに分かれて感想を述べ合ったりしました。博士の意図は

同じようにATMを受けても、「感じ方」は皆それぞれで違う
他人が感じた内容を知ることで、ATMのいろいろな可能性を知ることができる

ということを私達に理解させるためのものだったと思います。


本の一文に通じると思いますが、「経験はやっかい」です。まして、過去に受けたATMレッスンと同じ或いは似たような感じを別の機会にも体験すると「このATMをすると、こうなるんだ」と自分の感覚(記憶)を強化しがちになります。特に強烈な体験・感覚を得ると、気をつけないと自分にも他人にも「ある効果」「ある感覚」を強いるかもしれません。
そのグループ内のほとんどの人が同じ感想を持ち、自分だけが違う感想を抱いた場合、他人と同じ感覚・似た感覚を得られない自分は、

  • どこかおかしいのでは?
  • 間違った動き方をしていたのでは?
  • やっぱりこのメソッドは自分に合わないんだ
  • …etc

と思いがちです。プラス方向の感想ばかりが出ている時に、ゼロやマイナスの感想は言い出しにくかったり、或いは「それはおかしい」と相手の感想を否定してしまうかもしれません。

一番強く印象に残ったやりとりがあります。

    (ATMレッスン終了後)
  博 士:何か動きに変化がありましたか?
  生徒1:足裏が地面にぴったり吸い付く感じがして、体にとても安定感があります。
  生徒2:背が伸びた感じがします。
  生徒3:私は、このレッスンで何も変化を感じないのですが…
  博 士:何も変化を感じない人は何人いますか?
    (40人中、4,5人が手を挙げる)
  博 士:いい感想でしたね。
      レッスンを受けて「何も変化がない」人もいることを皆さん知っておいてくださいね。


ATMをして、常に何らかのプラス(気持ちが良い・動きが楽になる・体が軽くなるetc)やマイナス(脳が混乱する・気持ちが不安定になる・筋肉痛が出る・痛みが増す・足元がふらつくetc)の変化がある私が、「何も変化がない」という「ゼロ」という状態があることを初めて知ったのです。