フェルデンクライス日記かもしれない

フェルデンクライス・メソッドについて感じたこと考えたことも書いています。

『赤ちゃんと脳科学』(小西行郎/著・集英社新書)

赤ちゃんと脳科学 (集英社新書)

赤ちゃんと脳科学 (集英社新書)

この本は先日(2008年7月17日)取り上げた『赤ちゃんのからだBOOK』(海竜社/刊)と同じ著者です。
赤ちゃんのからだBOOK

赤ちゃんのからだBOOK

やはり安心して読める赤ちゃんに関する本です。その理由は

  • 赤ちゃんを見守る姿勢があること
  • 赤ちゃんの親へ、また取り巻く環境・社会へも観察の目が向けられていること
  • 赤ちゃんに関して「まだまだ解明されていないことが沢山ある」という学者としての姿勢があること
  • 赤ちゃんとお母さんをたくさん診て来られた臨床医であること
  • 文章に「脅し調」や「不安がらせ調」「決めつけ調」「あおり調」がないこと
  • 過去に書かれた本の内容に検証を続け、そのことについても書かれていること

きちんとした本だと感じます。小西先生の小児科を受診したくなります。(大人は診てもらえませんね)

イラスト豊富で可愛い作りの『赤ちゃんのからだBOOK』とは異なり、図やグラフ・学説・現在の研究成果も書き込まれた、文字がほとんどの本ですが分かりやすく書かれています。

印象に残っているのは、第7章「子供の発達を幅広く『見る』」です。その中の、著者が本書で述べたかった新しい赤ちゃん観

  1. 赤ちゃんは、自ら行動し、環境と相互作用する存在である。
  2. 赤ちゃんの発達は、必ずしも右肩上がりではない。
  3. 赤ちゃんも、一人の人間としてその存在を尊重すべきである。

これは主語を「子供」「大人」「人間」に変えてもあてはまると思います。

そして、赤ちゃん・子供の行動が、大人の都合のいい解釈や印象で語られたり、早期教育へ駆り立てられている現状への著者の疑問が何度か登場しています。臨床現場で「??」と思われることを本当にたくさん見て、その背景を考えて、お母さんに説明をしながら、赤ちゃんの幸せを願っていらっしゃる小西先生の様子がうかがえます。

それにしても、赤ちゃんや子供を見なくなった(見守らなくなった・観察しなくなった)私達周りの大人は代わりに何を見ているのでしょうか?目を塞いで何も見ていないのかもしれません。