フェルデンクライス日記かもしれない

フェルデンクライス・メソッドについて感じたこと考えたことも書いています。

『イッセー尾形の人生コーチング』(森田雄三/監修、朝山実/著、日経BP社/発行)

イッセー尾形の人生コーチング
イッセー尾形の作り方』というワークショップの様子を中心に描いた本です。


このワークショプは 演出家の森田雄三さんを講師に

  • 台本・下準備なしで
  • 演劇は素人の参加者が
  • 4日間の稽古だけで
  • 2日間の有料連続公演を行う

というものです。


初日の開始早々、森田さんが参加者に「じゃあ、何か思いついたことを言ってみてよ」と指示することから始まるワークショップの様子に、「え〜!?普通自己紹介とか参加動機を言うことから始めるもんじゃないの?」自分がまるで参加しているような気持ちになり、ドキドキし始めます。 


イッセー尾形の作り方』ワークショップでは、森田さんがどこからボールを投げてくるか、いや、飛んでくるものがボールである保証はありません。予測不能な4日間なのです。そもそも『素人が4日間の稽古だけで2日間の有料公演を行う』ということ自体がもう「予測不能」の塊です。


この本を読んでいる私は参加者でないのですが、読み進めていくうちに、準備するだけ無駄な気になってきます。予想も予測も準備も計画もしない方がずっとよさそうです。


ですから、森田さんの4日間でプロのコツを掴む『秘策』

   「準備をしない」
   「困りなさい」
    (『イッセー尾形の人生コーチング』109頁)

でした。


普段の生活も、仕事もレジャーも、無駄がないよう困らないようにと、予測や計画を立て準備をします。ところが、ワークショップではその反対を要求されます。森田さんから投げられた“とんでもないもの”に、驚き、困り、立ち往生して必死に考えて思いがけず内側から何かが飛び出す。そのプロセスを体験することがこのワークショップのテーマの一つかもしれません。


このワークショップをTVドキュメンタリーで描いたら、どこを切り取っても、どう編集しても「濃密過ぎる」だろうと思います。ですから、著者の朝山実さんの余白が多い描き方に納得しました。


プロローグに

  • 言いたいことを、他人に上手に伝えられない
  • すぐに言葉に詰まってしまう
  • 人前に立つと、とたんにドキドキする
  • 他人の目や反応が気になる
  • 特技も取り柄もない、自分が嫌いだ

   一つでも「イエス」があった人。この本は、あなたに向けて、書かれました。
   ぜひ次のページへお進みください。
    (『イッセー尾形の人生コーチング』1頁)

とありました。読み終わってからこのプロローグに気づきました。
私は「イエス」が3つでした。