『イッセー尾形の人生コーチング』(森田雄三/監修、朝山実/著、日経BP社/発行)
『イッセー尾形の作り方』というワークショップの様子を中心に描いた本です。
このワークショプは 演出家の森田雄三さんを講師に
- 台本・下準備なしで
- 演劇は素人の参加者が
- 4日間の稽古だけで
- 2日間の有料連続公演を行う
というものです。
初日の開始早々、森田さんが参加者に「じゃあ、何か思いついたことを言ってみてよ」と指示することから始まるワークショップの様子に、「え〜!?普通自己紹介とか参加動機を言うことから始めるもんじゃないの?」自分がまるで参加しているような気持ちになり、ドキドキし始めます。
イッセー尾形の作り方』ワークショップでは、森田さんがどこからボールを投げてくるか、いや、飛んでくるものがボールである保証はありません。予測不能な4日間なのです。そもそも『素人が4日間の稽古だけで2日間の有料公演を行う』ということ自体がもう「予測不能」の塊です。
この本を読んでいる私は参加者でないのですが、読み進めていくうちに、準備するだけ無駄な気になってきます。予想も予測も準備も計画もしない方がずっとよさそうです。
ですから、森田さんの4日間でプロのコツを掴む『秘策』は
でした。
普段の生活も、仕事もレジャーも、無駄がないよう困らないようにと、予測や計画を立て準備をします。ところが、ワークショップではその反対を要求されます。森田さんから投げられた“とんでもないもの”に、驚き、困り、立ち往生して必死に考えて思いがけず内側から何かが飛び出す。そのプロセスを体験することがこのワークショップのテーマの一つかもしれません。
このワークショップをTVドキュメンタリーで描いたら、どこを切り取っても、どう編集しても「濃密過ぎる」だろうと思います。ですから、著者の朝山実さんの余白が多い描き方に納得しました。
プロローグに
- 言いたいことを、他人に上手に伝えられない
- すぐに言葉に詰まってしまう
- 人前に立つと、とたんにドキドキする
- 他人の目や反応が気になる
- 特技も取り柄もない、自分が嫌いだ
一つでも「イエス」があった人。この本は、あなたに向けて、書かれました。
ぜひ次のページへお進みください。
(『イッセー尾形の人生コーチング』1頁)
とありました。読み終わってからこのプロローグに気づきました。
私は「イエス」が3つでした。