フェルデンクライス日記かもしれない

フェルデンクライス・メソッドについて感じたこと考えたことも書いています。

左脳を黙らせる〜「奇跡の脳」(ジル・ボルト・テイラー著、竹内薫訳、新潮社)

昨日の記事に書いた“発見”は、

奇跡の脳

奇跡の脳

を読んだ影響かもしれません。

いろいろな風に読める

この本は、
  ・脳卒中になった方、そのご家族
  ・医療に従事する人
  ・高齢者介護に従事する人
  ・ビジネスマン(自己啓発書として)
  ・コミュニケーションについて考える人
  ・ボディワークを学ぶ人
に役立つ一冊だと思います。

奇跡の脳」(ジル・ボルト・テイラー著、竹内薫訳、新潮社)
◆目次
はじめに 心と心、脳と脳
1章 脳卒中になる前の人生
2章 脳卒中の朝
3章 助けを求めて
4章 静寂への回帰
5章 骨まで晒して
6章 神経科の集中治療室
7章 二日目 あの朝の後で
8章 GGが街にやってくる
9章 治療と手術の準備
10章  いよいよ手術へ
11章  最も必要だったこと
12章  回復への道しるべ
13章  脳卒中になって、ひらめいたこと
14章  わたしの右脳と左脳
15章  自分で手綱を握る
16章  細胞とさまざまな拡がりをもった回路
17章  深い心の安らぎを見つける
18章  心の庭をたがやす


回復のためのオススメ
附録A:病状評価のための10の質問
附録B:最も必要だった40のこと
訳者あとがき
注釈
脳についての解説

この本は3つのパートに分かれています。
  1.本文前半:1〜10章 脳卒中になった日から手術日まで
  2.本文後半11〜18章 手術後の回復プロセス
  3.附録:脳についての解説

発症から手術日まで:本文前半

特に、脳卒中の朝、二日目、三日目を描いた2〜8章は、ドキュメンタリ‐映画を見ているようです。中でも脳卒中の朝(2〜6章)の場面は、著者がAVM(脳動静脈奇形)による出血性脳卒中となり、大量の血液が大脳の左半球に吐き出され、脳の機能がどんどん落ちていく様子が、実況中継を見ているように描かれています。このため、私は「早く、早く!救急車を呼ばないと!!」とドキドキしながら読んでいました。これほどリアルに書けたのは、他でもない
著者が神経解剖学の専門家であったこと
著者が意識を失わなかった
からです。

回復のプロセス:本文後半

訳者あとがきに

本書の前半部分は、脳科学者の目から見た脳卒中の発症と手術とリハビリの様子が、生々しいタッチで描かれています。ところが後半になると、ムードが一変し、「右脳マインドのススメ」とでもいうべき内容になります。もしかしたら、後半の調子についていかれない、と感じた読者もいるかもしれません。
(「奇跡の脳」224頁)

を本文の前に読んだ私は「え〜っ、神秘主義とかスピリチュアルな方面の本なの??」と少し心配しました。でも実際は、私にとって親しみがあり、うんうんとうなずきながら読める内容だったのです。


前半部分は、認知症のお年より達を思い出しながら、後半は、私がフェルデンクライスメソッドを通して感じたり考えたりしていることと共通していることに驚きながら読みすすめました。
  「脳卒中にならなくても、
  フェルデンクライスのレッスンで、
  こういうことは経験できるやん
    (強烈さと速さは脳卒中に負けるだろうけれど)」
と思ったくらいです。

フェルデンクライス法

脳の手術からの回復は、心を建て直してからだの「気づく力(アウェアネス)」を回復する作業が大変でしたが、それに比べれば肉体面の回復は早いものです。……最も大きな難問は、手術によるあごの左の側頭部下顎関節の不具合でしたが、フェルデンクライス法(訳注:1940年代にモーシェ・フェルデンクライス博士が体系化した。からだに心地よい呼吸や筋肉の動きを通じて、脳を活性化する)と呼ばれる治療法を利用してすぐに治りました。
(「奇跡の脳」149頁)

とフェルデンクライスに触れた箇所があってびっくり。

脳内チームワーク

わたしが脳卒中によって得た「新たな発見」(insight)は、こう言えるでしょう。
「頭の中でほんの一歩踏み出せば、そこには心の平和がある。そこに近づくためには、いつも人を支配している左脳の声を黙らせるだけでいい」
(「奇跡の脳」132頁)

に同感です。私は「黙らせる」とはいいません。左脳に
しゃしゃり出るのをやめてもらう
えらそうにさせない
静かにしてもらう
ことが大切だと感じています。左脳も右脳もどちらも私の脳です。私の頭蓋骨の中に仲良く収まっています。他人の脳に指図することは不可能ですが、私の脳にお願いしたり、命令したり、励ましたり、ほめたり、なぐさめたり、と働きかけることは可能です。


私は、著者のように左脳・右脳を意識してはいません。脳の中ではそれぞれ役割分担があるらしい、一つの脳が八面六臂の活躍をしているのではなく、いくつもの部署(部員)がチームワークで働いているらしいことを、フェルデンクライスメソッドのレッスンを通して感じつつあります。


得意分野や年齢、性格、好み、声や体の大きさ、機動性もみな違う「私の脳」の中のスタッフが、チームワークを発揮できる環境を私が整えれば、「私の身体」は振り回されないですむのかもしれません。