見る目の高さが上がっていく
「一〇三歳になってわかったこと」
篠田桃紅・著 幻冬舎刊
今を生きていらっしゃる方が書いた本だと感じました。
仕事柄、多くの高齢者に接し、お話をたくさん聞いてきましたが
その方々とは違う視点を感じます。
ナニがちがうんだろ?
篠田さんの言葉は、身体も気持ちも「今」から出てきています。
過去の出来事であっても「今の目」で語っていらっしゃいます。
過去に止まっていない。
しかし、歳をとるにつて、自分の見る目の高さが年々上がってきます。いままでこうだと思って見ていたのもが、少し違ってみえてきます。同じことが違うのです。それは自分の足跡、過去に対してだけでなく、同じ地平を歩いた友人のこと、社会一般、すべてにおいてです。
「一〇三歳になってわかったこと」(篠田桃紅・著 幻冬舎刊)26頁
百歳を過ぎて生きるということはどういうことなのか。一つには、別の立場から客観視している自分と向き合うことなのかもしれません。
(同書、29頁)
私がこれまで聞いてきた高齢者のお話の中で、
心惹かれたり、共感したり、気づきを得るのは
彼らの「年々上がった目の高さから見える景色」を
共有した時だったのだと思います。
彼らの話が、繰り返される物語(昔の話)であっても
「今思うとな」「今気がついたけど」と
去年とは違う、前回聞いたものとは違う一言が出てきます。
その時の表情は、過去の感情から距離をおいたものになっています。
客観視したお話であれば、何度聞いても苦にならない。
不思議です。
篠田桃紅さんの男前なお話しぶりが聞けます。
ご著書について語られています。
NHKラジオ第1「マイあさラジオ〜著者に聞きたい本のツボ」
2015年6月7日放送分
http://www.nhk.or.jp/r-asa/book.html
(7月上旬くらいまで聞くことができると思います)