フェルデンクライス日記かもしれない

フェルデンクライス・メソッドについて感じたこと考えたことも書いています。

動きの軌跡をさえぎらない〜「もう一歩踏み出すための介護セミナー in 大阪」

(※昨日のつづきです)


もう一歩踏み出すための介護セミナー in 大阪」(サイト
の第1日目(3月22日)の実技で、興味深いことを体験しました。

実技:椅子からの立ち上がり

・2人1組
・介助者役[A]、介助される役(B)
  1.介助される人(B)は椅座位(椅子に腰掛けている)
  2.介助者[A]は(B)の前に立つ
  3.[A]の手のひらの上に、(B)の手をおいてもらう
  4. [A]は(B)の立ち上がり動作を妨げないように、手で支える
  5.(B)が椅子から立つ
(「福辺流 力のいらない介助術」77〜84頁に相当します)

この実技で、介助者役[A]は介助される役(B)の手や腕を握ってはいけません。[A]の手のひらが「手の形をした小さな台」のようになっているだけです。(B)はこの台を支えに立ち上がります。

立てない…

介助される役をしていた私は、なんだかよく分からないけれど立てなくて、介助者役のXさん共々驚くことになります。何度か試した後、二人がつぶやいた言葉が

私  : あれ?やっぱり立てない。
Xさん: なんで?この人おかしい。

お互い、その前に組んでいたパートナーとの練習ではうまく出来ていました。Xさんは「コツをつかめてきたかも」という感触があったようですし、もちろん私は椅子から立ち上がれていました。ところが、パートナーチェンジをしたら様子が違います。私のお尻が椅子から離れても、膝を伸ばして立つことができません。何度やっても立てないので、「私、いじわるしてるの?」と自分に疑いを向ける始末。

立ち上がれない理由

スタッフの方を呼んで、介助をしてもらうと立てます。
再びXさんと二人で「???」です。
そこで、介助なしの私の立ち上がり動作を、Xさんとスタッフに観てもらいます。介助あり→介助なし→介助あり…を繰り返していくうちに二人が気づいたのは、

(介助される人は)
動きの軌跡をさえぎられると、動けなくなる

でした。介護関係の本*1には、書いてあることかもしれません。
でも、これほど身体で強く実感したのは初めてです。
もしかするとXさんの手をぐっと押し下げたら立てたのかもしれません。
でも、それだとセミナーテーマの「力のいらない」から外れてしまいます。

不機嫌には訳がある


「動きの軌跡をさえぎられると、動けなくなる」を身体で実感する直前、私の中に生まれていたのは「イライラ感」でした。感情面でのイライラではありません。身体の奥の方から深いところから、細い煙のようにのぼってきていたものです。最初それが何かわかりませんでした。身体が「邪魔しないでよっ!」と声を上げて、やっと気づきました。身体がイライラしていることに。痛い・かゆい・しびれ・熱い・空腹etcだけが、身体が不機嫌になる原因ではないのですね。動きの行く手を邪魔されても、身体はご機嫌ななめになるのです。

介助術の3本柱

介助される人の
  動きをよく観察する
  動きを邪魔しない
  動きを待つ
これが、セミナー1日目で実感したことです。
でも、それを当り前のようにするのには、
  ■感覚を磨く
  ■思い込み・決めつけをしない
  ■変化に気づく
と、頭の切り替えと身体に刷りこむ時間が必要です。


「介助される人」にそのように向き合うことで、何が生まれるのでしょう?
たぶん、セミナー講師、福辺節子さんの本「力のいらない介助術」
福辺流 力のいらない介助術
の帯に書いてあった

相手の意欲と力を引き出す

だと思います。


もう一歩踏み出すための介護セミナーHPこちら

*1:介護関係の本:
三好春樹さんの著作だったと思いますが、
指一本で相手を椅子から立たせなくする
という内容です。椅子に腰掛けている人のおでこに、人差し指を軽く当てて、その状態で立ってもらおうとすると、立ち上がれない。セミナーの実技では、私は相手の手のひらに手をのせているだけで、「邪魔され度」が「おでこに指」より低いのに立てませんでした。