蛇口−手−口:出力と入力と気づきの輪
フェルデンクライスメソッドのグループレッスンATM (Awareness Through Movement:動きを通した気づき)では、
普通の呼吸ができる程度に動く
よう指導者からアドバイスされます。
- 動きの指示に従うことに一生懸命だったり
- 速く・大きく・多く動こうとしたり
- 自分の状態以上の動きをしようとしたり
- 自分と周りの人の動きを比較したり
- 内部感覚への注意がおろそかになっていたり
- ……
すると、息を止めたり呼吸が浅くなったりしています。このため、レッスン受講者はレッスン中何度か『呼吸に注意を向ける』言葉を耳にすることになります。
この『普通の呼吸ができる程度に動く』を意識すると、大変おもしろいことに気づきます。動く指示を与えられている身体の部位以外のあちらこちらで、緊張(筋肉を収縮させている)が生まれていることを感じるのです。(『実際に行っていることに気づく』2008.07.09付記事)
この「筋肉を収縮させる」は、脳から見ると『出力』になります。動きの指示と関係のない部位の「緊張」は、『不必要な出力』や『出力過多』に相当します。
例えば、指示を聞いて眼を動かそうとしているのに、歯を食いしばっていたり、手を握りしめていたら、「歯(あご)」「手(指)」は『不必要な出力』です。
この筋肉の出力コントロールに意識を向け、実際に調整しながらATMレッスンをしていくと、『入力』(=感覚・内部感覚)が変わってきます。感覚が変わると、『出力』が変わります。……こうして『出力』と『入力』がぐるぐるグルグル回っていくのです。ちょうど、水を直接飲もうとする時の、蛇口−手−口の関係に似ていると思います。
●蛇口(カラン):脳
▲蛇口に置いている手:出力(筋肉)
■水の出口の下で開けた口:入力(感覚)
蛇口を開けすぎると、水量が多すぎて上手く飲めません。また、蛇口を開かなければ、水は一滴も落ちてきません。自分が飲みたい分量を、無駄にこぼすことなく飲むには、調節が必要です。
ATMレッスンでうまくいっている時は、脳内で、この『出力』と『入力』のやりとりが猛スピードで行われていると感じられ、美味しい水(=気づき:Awareness)を飲むことができるのです。